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学校法人の資格と教育制限について
来年からモンテッソーリ教育をしている幼稚園に三才の娘を通わせようと思っています。
園長先生は熱心でとてもまじめな方です。ただ、学校法人の指定を受けていないため、経営的に苦しいようで、スクールバスの運行さえもお金の面で苦しいようです。
学校法人の資格を受ける条件は整っている園ですが、指定を受けて補助金をもらうと、指導要領に沿った教育をしなければならないので(モンテッソーリ教育が出来なくなる)、受けていないそうです。園の経営で赤字になっている部分は園長先生が個人的に負担している、という話も聞きます。

そこで質問なのですが、学校法人の資格を取ると、どの程度までモンテッソーリ教育が制限されるのでしょうか?この園のモンテッソーリ教育は、英才教育ではなく、子供の個性を尊重した「正統派」のもので、とても良心的な園なのですが・・・。

園長先生自身もすごく迷ってらっしゃるようです。資格を取って、この園らしさが無くなってしまうのは不本意な事でしょう。ただ、なにか保護者から要望が出るたびに「金銭的にくるしい」という話が出てきます。公立の2.5倍のお金を払っているのに、なんだか貧乏だなあ、というのが正直な感想です。
質問が長くなってすみません。よろしくお願いします。

(ママぞう さん)


ママぞう さん、ご相談いただきありがとうございます。旭幼稚園、副園長の井上です。

ママぞうさんのお子さまが通う予定の幼稚園に限らず(学校法人の幼稚園であっても)経営が楽、という幼稚園は存在しないと思います。私の園を含めて、収入(園児さんの納付金と国や県からの補助金)から支出(人件費や保育にかかる経費)を引いたうえで、減価償却(園の建物や備品が古くなり、壊れたときに備えて引き当てておくお金)を行い、さらに同じものを買い換えるにしても、その価格が購入当時より値上がりしていることを見越した準備金を用意しておけないと「健全な財政」とはいえないと思います。これは幼稚園が「もうける」のではありません。現在の規模・施設を永続的に維持するために必要なお金なのです。

でも、現在では原価償却すらまともにできない、いえいえ総収入から総支出を引くだけでマイナスになる、という幼稚園も多いのです。それ程幼稚園の財政状況は厳しいといえます。そんな中で、日本の将来を担う子どもの育成、という「やりがい」そして子ども達の「笑顔」。これはお金では買えない財産です。これだけを精神的な支えとして、頑張っている幼稚園を代表して、今回のご質問にお答えさせていただきます。

先ず最初に

> 学校法人の資格を受ける条件は整っている園ですが、指定を受けて
> 補助金をもらうと、指導要領に沿った教育をしなければならないので
> (モンテッソーリ教育が出来なくなる)、受けていないそうです。


とありましたが、これは全く気にする必要はありません。本来、私立学校は学校法人(公益性の高い学校で、その永続性を確保するために、土地や建物を公に寄付した、教育を目的とした公益法人)でなければできないのですが、学校教育法の第102条に「盲学校・聾学校・幼稚園は当分の間、学校法人でなくとも運営ができる」ということになっています。この法律は今でも生きておりますので、現在でも個人立や宗教法人立の幼稚園も認められています。

教育的な内容は、学校法人であっても、個人立であっても同等です。学校法人だから○○ができる、できないということはありません。学校法人になることのメリットは、やはり公的な資金が補助金としていただけることではないでしょうか。これは補助金が、個人立や宗教法人立の幼稚園に支給されることが現在の法律ではできないようです。たしかに宗教法人立幼稚園に補助金が支給されたら、憲法問題にまで発展してしまいますよね。ですから、現在の制度では補助金が満額いただけるのは学校法人立幼稚園に限定されています。

私の知り合いの園長先生(お寺の住職さんで、学校法人立幼稚園を運営しておられます)は、こう公言しています。「私は住職として、お釈迦様の精神を子ども達に伝えることが使命と思っている。ある意味で宗教的教育をしているつもり。ただ、誤解しないで欲しいのは『宗教教育』ではなく、『宗教的情操教育』を行なっているのだ」このような先生もいらっしゃるのですから、学校法人になったから、モンテッソーリ教育ができなくなる、ということはまずないと思います。私立幼稚園の場合、教育課程の編成義務者は「園長」です。公立幼稚園の場合は、文部科学省の「幼稚園教育要領」に従った教育課程を編成していますが、私立の場合はこれに「準拠した」教育課程でよいことになっています。ですからキリスト教精神を元にした教育も、仏教精神に基づいた保育も、モンテッソーリもフレーベルもシュタイナーも、「これは」と思う教育が自由に行なえるのが私学の良さ。私はそう思っています。

ですからママぞうさんの通われる幼稚園が、学校法人になったから、即モンテッソーリ教育ができなくなる、ということはありません。モンテッソーリ教育をバンバンやって教育委員会や県の担当課から苦情がきた、という話は聞いておりません。
でも最低限「文部科学省・幼稚園教育要領」の精神を踏み外した保育はしないよう心がける義務があると思います。それさえ踏み外さなければ、どんな保育だって良い、ということになります。それが私学の良さであり、悪さでもあるのですが…。

公立幼稚園の2,5倍の納付金、とありますが公私の格差はそんなものではありません。それは、あくまでも納付金であり、補助金などの直接幼稚園に行くお金を合計すると、ある方の試算で5倍から7倍。そして幼稚園と保育所を比べると、これまた5倍とも10倍とも言われる格差があります。最も厳しいのが私立幼稚園、最も裕福なのが公立保育所。その差は…。考えただけでも恐ろしい差です。子どもの幸福を願って作られたのが幼稚園・保育所のはずです。特に私立の場合、地域に幼児のための施設がなく、やむにやまれず、という面があったとは思いますが「私がやる以上、こんな子どもに育って欲しい」という 「願い」があったと思います。それが私学の原点であり、存在意義ではないか、と思います。そして本当に子どもの幸福を願って、子どものために努力している、本物の幼稚園を選んでいただくことが最終的に「良い幼稚園」が増えることになると思います。

(アドバイザー:井上智賀)




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