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makoさん、ご相談いただきありがとうございます。旭幼稚園、副園長の井上です。
今回のご相談は、makoさんがどのようにしたいのか、等々具体的なことが判らないので回答しずらい部分がありますが、私の知りうる限りの知識でお答えいたします。
まず現在の幼稚園・保育所などで「一斉保育・自由保育」という言葉を使う場合がありますが、大部分の方が(大学教授を含めて)正しい使い方をしておりません。この「一斉保育・自由保育」という言葉は、本来の意味を離れて、言葉のイメージだけが先行している。とてもやっかいな用語なのです。
この「自由保育」という言葉を最初に使い始めた方は多分、倉橋創三先生だったと思います。(遠い記憶をたよりに書いています。もしまちがっていたらごめんなさい)この方は日本の幼稚園黎明期に活躍された教育者で、それまでの幼稚園は遊びもフレーベルの「恩物」という、今で言う知的教育玩具のようなものの指導。遊戯の指導などというものが中心であったため、もっと子どもの持つ能力や発想を活かした活動ができないか、と考え「自由保育論」という論文を発表されました。この中で今までの幼稚園が行なっていた「教師が中心になり、活動のあり方・方向性を決めていた保育」に疑問を投げかけ、保育理念として「自由保育」を提唱されたのです。
これを契機に、今までの保育を「設定保育」という名称で呼ぶようになりました。ですから「自由保育」「設定保育」は保育形態ではなく、保育理念の名称なのです。また「一斉保育」これは保育形態の名称です。ですから一斉保育と自由保育を相対する対概念としてみることは大きな間違いですが、幼稚園・保育所の関係者でも未だに「一斉保育・自由保育」という活動形態としてこれを見る方が多いのも事実です。
このことをふまえてお話をさせていただきますと、「自由保育」は活動の形態があまり規制を受けない活動(自由遊び中心)、つまり形態ではなく、子どもが自由な発想を活かした保育。保育理念をさしています。だから一斉保育のなかでも「自由保育」を展開できる場面もあるのです。 保育者にはクラス全体での活動を期待して、以前から様々な「投げかけ」を子どもにしてあります。そのうえで、「今ならみんなで協力して製作をするチャンス」と判断して子どもに投げかけます
保育者「みんな、何をしたい?」 子ども「前に絵本で見たおかしの家を作りたい」 保育者「みんなが入れるようなお家だと、難しいよ」 子ども「みんなで相談して決めるよ。」 そして材料になるダンボールを集める係、絵の具や飾るものを作る係、絵本を見て設計図を書く係などが相談の上決まり、ぶつかり合いながらも、ひとつのものを作るという共通理解のもと、活動が進行します。
このような活動は、教師がねらって投げかけたものですので、保育形態から言えば一斉保育です。でも活動内容を見れば(保育理念とすると)自由保育となります。現在の幼稚園・保育所はイメージ戦略として「うちは自由保育」などと宣伝するところもあるようですが、教員がかわらないのが「自由」ではありません。それは「放任」であって、教育ではないのです。 そして…どんな保育形態・保育理念を信条としても、最終的にそれは「子ども」が主役として活動するための方法でしかありません。私の理念ですが「幼稚園に行なってはいけない活動はない。やってはいけない方法があるだけ」というものがありますが、その理由は以上のご説明でお判りでしょう。
どうぞmakoさんも、このあたりをご理解いただき、保育の本質を実現する本物の幼稚園を選んでください。ちょっと専門的な回答になってしまったようですが、お許しください。
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